ある二つの国の興亡

takino132004-01-26

昔々ある所に白い国と黒い国がありましたとさ。
二つの国はそれぞれ平和の内に統治されていましたが、あるとき、強大で邪悪な魔物が襲って来たのでした。
魔物はまず白い国を破壊し始めました。
しかし白い国の人々は魔物を無視し、いつも通りの生活を続けました。
すると魔物は飽きてしまったのか、白い国を去っていきました。
こうして白い国は何もせずに守られたのです。

白い国を去った魔物は、次に、黒い国にやってきました。
魔物が街を少し破壊し始めた頃、黒い国の魔道士がこう言いました。
「私が国を壊す魔物を退治してみせる!」
そういって魔道士は呪文を唱えて正義の炎を召喚し、魔物を攻撃しました。
すると魔物は悶え苦しみ、街を破壊するのをやめて逃げ出そうとしました。
黒い国の民は大喜びして魔道士を称えました。
人々は魔物が破壊を止めれば満足だったのです。
しかし正義の使者として賞賛された魔道士はいい気になってこう言いました。
「悪い魔物は徹底的に攻撃してやる!」
そう言って魔道士は滅びの雷を呼び寄せました。
もうこの魔道士に正義の心はありません。いつの間にか、国を守る事から
魔物を倒す事に目的がすりかわっていたのです。
強大な滅びの雷は、黒い国もろとも魔物を滅ぼしました。
こうして黒い国は「正義」によって滅びましたとさ。