厄年の残りが降りかかる

なんとか雪を下ろし、車に乗り込みエンジンを掛ける。
キュルル キュルル キュルル…


…バッテリーがあがってしまっていた!
やはりあんまり乗らないから放電しつくしてしまったか。
これでは出かけられるはずもないので友人に電話する。
「もしもし?車のバッテリーがあがって動けん。今日は中止だ。」
「オレの弟がエンジン掛かるようにしてくれるってよ。」
「…それは根本的な解決になっていない気がするんだがな…。」
十分後、友人とその弟がオデッセイに乗ってやって来た。
チクショウ、若いうちから高い車乗ってるなチクショウ。
弟は手馴れた手つきでブースターケーブルを繋ぎ、オレの車のエンジンを掛ける。
キュルル ブォオオン  おお、エンジン掛かった。
友人の弟に例を言い、お小遣いを渡す。
弟が帰った後、オレと友人は車に乗り込む。
食事をして駄弁ったり、その辺を見て回る。
雪が強くなり吹雪いてきたのでワイパーをかける。そしてここで悲劇が。
ワイパー壊れた…。
運転席側のワイパーが全く動かない!
しかも吹雪はさらに激しさを増し、一分も立たずに前が見えなくなる。
早く修理に出さねばいけない、しかしこの車を買った店までは30分以上掛かる…。
前が見えなくても走るしかないらしい。
その辺の車屋で修理して貰って数千円取られるのは嫌だし。
まぁそれでぶつけてしまって
「あぁ、数千円をケチらないで修理してもらっておけば良かった!」
というのも十分に予想が出来たが、こういう時に正しい判断が出来る人も
そういないだろう。
人間は目先の金に目が眩むんだ。分かっていても無理なんだ。
そんなどうでもいい論理を友人に説きながら、ギャランは吹雪の中を進む。
どれくらい吹雪かと言うと、「キングゲイナーのOPでゴレームが走ってくるシーン」
の倍くらい吹雪いていた。
赤信号で停車するたびにフロントガラスを拭かないとどうにもならない。
実際のところは拭いてもどうにもならないのだが、どうせどうにもならないのならば
拭かないと気分がどうにもならない。
ガラスの上の方は少しだけ視界があるので、そこを覗き込みながら運転する。
なんか戦車兵になった気分がする。
「前方に敵戦車!ヤークトパンター型!」
「いやいや、ただのベンツじゃないか」
などと友人と喚き散らしながら突っ走る。
その内、少しだけ見えた視界も無くなってしまった。もう全く前は見えない。
多少視界がある助手席に座る友人のガイドで進む事となる。
今度は潜水艦かよ。
「我レハコレヨリ出港ス、全速前進!」
「ヨーソロー。よう早漏
「二次方向に敵艦!回避ーッ!!」
「前方赤信号!耐ショック体勢をとれ!」
「艦長!右舷に母港が見えます!呉の灯りです!」
「やったぞ諸君!我々は生き延びたのだ!生き延びたものが勝利者だ!」
等と喚き散らしながらなんとか到着。
無事にワイパーは直ったが散々な一日であった。
バッテリー買わなくちゃ駄目か、ただでさえ年末は出費が多いってのに。