開拓者達の宴

スーパーで食料を買い込んで部屋に引き篭もることになった。
それにしてもビール買い過ぎだ。
20本近くあるんじゃないのか?
オレの記憶が正しければ朝に天丼を食べたはずなのだが、
イクポがまた天丼を食べている。
天丼を天丼とな? 一体どうなっているんだその偏食。
それにしても、これだけのビールと食物の代金を
ヤングに支払わせてしまって申し訳ない。
お金を払うつもりが、渡すタイミングを逸してしまった。
同い年なのに情けないなオレは。
ヤングは本当に太っ腹だ。
オレ達にだけじゃなく、テーブルと床とバスタオルにまで
ビールを飲ませてあげているなんて!
あらかた食い終わった後はボードゲームをする事になった。
カタン」と言うゲームで、家や道を造って島を占領し、
合計ポイントが10点に達した者が勝利するルールらしい。
一度もやった事は無いが、せっかくだから覚えてみようか。
一回戦、二回戦とイクポが勝利する。
負け続けはしたが、勝つコツが少し分かった気が。
このゲームは確かに熱中できる。
相手プレイヤーとの交渉が面白すぎる。
三回戦、こんどはあずみんが道を造りまくって中盤から首位に躍り出る。
ロンゲストロードと呼ばれ、道をもっとも長く造ったプレイヤーに
与えられる称号は2ポイントの価値があるのだ。
家は1ポイント、街は2ポイントの価値がある。
町や家は破壊することが出来ない。
よって、彼の独走を止めるには称号を奪うしかない。
このゲームのポイント元は、家と街、そしてチャンスカードに隠されている
議事堂や市場等の1ポイント、そして称号しか無いのだ。
他の称号としては、ラージストアーミーと言い、
ソルジャーカードを三回使ったプレイヤーに与えられる称号+ポイントもある。
あずみんの称号を奪う為、オレとヤングとイクポで三国同盟が結成される。
オレといくぽは、道を造るために必要な土&木のカードをヤングに渡し、
現時点で道の長さが最もあずみんに近いヤングが道を造り捲る。
その共闘の甲斐あり、ロンゲストロードの座はヤングに移り、
とりあえずの危機は去った。
2点の称号を得たヤングではあったが、あずみんを撃墜する為に資源を
使い切ってしまい、家も街も全く増えていない。
つまり、中盤において表面上は四人の点数が均衡状態となったのだ。
だがしかし、オレはソルジャーカードを既に二枚使用している。
あと一枚使えば、ラージェストアーミーとなり、2点が与えられる。
そして、この伏せてある二枚のカードの中身は「市場」と「議事堂」
既に2ポイント分は所有しているのだ。
現在のポイントは8、家をもう一つ作り、それを町に進化させれば
10ポイントになって勝利することが出来るのだが、
如何せん資源が足りない。
あずみんが使った「独占カード」で鉄資源を全て奪われてしまい、
家は作れても町に進化させることは出来ない。
資源を集めてからでは時間が掛かりすぎ、その間にあずみんが道を造って
ロンゲストロードを奪還した瞬間に彼が勝者となってしまう。
どうする… どうすればいい? KOOLになって考えるんだ… ざわ…ざわ…
そう悩んでいる間にもゲームは進み、誰かがサイコロを振った。
出た目はオレが町を置いた場所を指している。
この場所の資源は木、町がある場合は得られる資源が倍なのだ。
木ばかり多くても、町の建造には麦2+鉄3が必要なのであまり意味が無い。
しかし、その瞬間にオレはゲーム板に一筋の光を見た。
こ、これは勝利への道!
これならあと3巡、早ければ2巡で勝てる!
そう思う内にオレのターンが来た。
表情に出すと手の内がバレてしまうので、あくまで普通を装う。
余りに余っていた木と土で道を二つ作り、
あずみんが道を伸ばせる場所を封鎖したのだ。
しかも、その道が伸びた先には港がある。
この港に家を作ると、木2の割合でで好きな資源1と交換する事が出来る。
港を持っていない場合のレートが4:1だという事を考えると、
これを利用できるか出来ないかはかなりの違いとなる。
ついでに家を作っておくかぁのノリで家を建造。
ロンゲストロードの封印+家によるポイント+港の所有、
一度のターンで三つの効果を発揮する事ができた。
オレのターンを終え、他のプレイヤーもサイコロを振って行く。
その途中、オレが家を置いた鉄資源のフィールドの目が出た。
よしよし、この一つの鉄資源がオレの勝利を確約する!
またオレのターンが回ってきた。
うーん出来ることがもうないな、仕方ないから鉄1羊1麦1を消費して
チャンスカードを一枚引くか〜 とポーカーフェイスで呟きながらカードを引く。
このカードは絶対にソルジャーカードでなければならない。
捲って見る、ふふふ、ソルジャーカードを引いた。
チャンスカード25枚の内14枚がソルジャーカードで、
既にオレが2枚ソルジャーカードを使用し、
ここに伏せてある2枚のカードは1点カード…。
確率的には半分以上でソルジャーカードが来る計算なのだ。
ニヤつきたい気持ちを抑えながらターンエンド。
まだだ、今はまだ目立ってはいけない。
表面的にはオレのポイントは最下位の5ポイントなのだ。
今の手持ち資源は麦1に木8。
他の3人は特に目立った動きが無いまま次のオレのターン。
もう隠す必要が無いので思いっきりニヤニヤする。
客観的に見ればかなり気色悪い男に違いない。
「木8本を港で麦1鉄3にトレード! そして麦2鉄3を生贄にし、家を町に進化!
そして!ドロー!ソルジャーカード! ソルジャー3体で
封印されしラージェストアーミーの召喚!
そしてそして!ドロー!チャンスカード! 市場!
そしてそしてそして!ドロー!チャンスカード!議事堂!
このターンで5ポイントをGET! 合計ポイント10! オレの勝利ィィィィ!!!!」
うっひょう!テンション上がるぜ。
やった、3回めなのに勝てちゃった!
カタン最高に面白いぜ。