セントヘレナファイアー

JALが破産し、ANAに吸収合併されて3年が経った。
ANA+JALでANALと言うネーミングは如何なものかと思いつつ、
あまり深くは考えないようにする。
そのANAL815便成田-パラグアイ便にオレは乗っているのだ。
そこそこ美味い機内食を食べ終えると
スチュワーデスさんが雑誌を持ってきた。
適当にページをめくって見る…。
「2012年!次元上昇(ASCENSION)によって人類の大半は滅びる!」
13年ほど前にも似たようなことを聞いたような気がするが、
神々の気まぐれによって未だに生き続けるハメになったんだもう信じないぞ…。
視線を感じて雑誌を置くと、さっきのアングロサクソン系スチュワーデスさんが
まだそこに立っていてこちらを見ているのだった。
「もうコンソメスープは13杯も飲んだナリよ。うわぁ…パンツの中とても暖かいナリ」
と流暢なアイルランド語でジョークを言ってみたが
いろいろな意味で通じていないようだ。
彼女は14杯目のスープを渡しながら確かにこう言ったのだ。
「ASCENSION・PLEASE」


瞬間、周囲のもの全てが消え去った。
眼に見えていたはずのものが全て見えなくなった。
というより「もの」という概念が溶けてしまったような
そもそも「見える」とか「見えない」という感覚ではないような
感じる、強く感じる
見えない聞こえない触れないのに、それはここにあるという確固たる存在が
思念の中に入り込んでくる。
そうか、これがASCENSIONなのか!
今、三次元の世界から被昇天したのだ!
あぁ、オレは選ばれし存在だったのだ!
この新たな世界の隅々まで行き渡った思念の中で
オレは全てを知り、全てを行える。
チョコボールで10箱連続で金のエンゼルを出すことも
宝くじ10枚連番で買ったうちの必ず一枚を300円当選させることも
子連れの女が処女かそうでないかを100%的中させることも
全てが容易い。
我は世界なり 世界は我なり 我はコロ助ナリ
三千世界をも飲み込むほどの思念の片隅に
今までいた世界が見えた。
もはや何の未練も無いが、次元上昇出来なかった凡愚どもをあざ笑ってやろうと
覗いてみることにした。
…絵本や漫画のキャラクター達が立体化して大暴れしている。
一体何がどうなっているんだ!
そうか、ボヘミアン・ラプソティの本当の能力は
「二次元からのASCENSION」だったのだ!(な、なんだってー!?)
ええい、未練は無いが義理はある。
元いた世界を助けてやろう!
この「魂の救済者タキノさん」がな!
アニメじゃない!アニメじゃない!本当のことさ〜!
アニメじゃない!アニメじゃない!(以下繰り返し)
思念でジョイサウンドV2を具現化し、フルボリュームで世界に流してやった。
以後、この曲が賛美歌になったとかならないとか。
とにかく二次元からのASCENSIONは防がれた。



・・・と言う夢を見たがどうだろう?
長い割に落ちが弱い気がするが、夢にそこまで求めちゃいかん。