路上のユメ

大型バイクを物色するべくふらついていると
「特価! 07年モデル GSX1400 83万円!」
の値札が目に飛び込んできた。

ぐあッ こ…これは目の毒だ…。
20万円引きですよ20万。
しかも青白のスズキカラー!



だがしかし、約四ヶ月間の雪で乗れない季節を前にしては
流石に購入に踏み切れない。
それほどに山形の冬は長く、寒い。
もし今が春だったならば…。



きっとあのGSX1400は間もなく売れてしまい、
もう二度とオレと出会う事は無いだろう。
あぁ… でもアイツ、「乗ってくれ乗ってくれ」と
誘いかけてきてた様な気がするな。
その誘いを断るなんてオレはなんて嫌な男だ。
こんな辛い思いをするなら、出会わないほうが良かった。


バイクを選ぶ決め手はスペックや見た目だけでは無い。
新車で安くてデザインが良くても「?」と思うこともあるし、
全く同じバイクを三台並べたとしても、
それぞれから感じるイメージは違う筈。
そういうなんとなくな感覚は結構あてになるので
実車を前にしないと購入しない主義だ。

オレは誰か他の人の手に渡るであろうGSXの幸せを祈りつつ、
もしも手に入れてたらどんな日常が待っていたのかを
ちょっと想像して楽しんでみる。
しかし想えば想うほど、それが決して届かぬものだという
現実を叩きつけられてまた悲しくなる。
バイクってのは女と同じだねぇ。
どちらも金を喰い。どちらも跨るものだ。


オレはいずれどのバイクと出会い、共に走る事になるんだろう?
未来がどうなるかはよくわからんが、
せめて最後くらい幸せな夢を。