水族館の写真が一枚も無い理由は静かに物語られる

昨日、名港水族館に行ったという話を書いたが、
せっかくの水族館内の写真が一枚も無い事に、
謎を抱いた方も居られるのではないだろうか?
しかしカメラを持って行かなかったのではない。
確かにそれはオレの手元に存在したのだ。
ならばどうしてイルカやベルーガ達の写真を撮っていないのか?
それは、撮らなかったのでは無く、撮れなかったからだ。



実は、名港水族館の前に行った所があった。
それはガーデン埠頭に永久係留されている「南極観測船ふじ」だ。
八甲田丸、摩周丸と、船を見学するのが大好きなオレにとって、
南極観測船は絶対に押さえておきたい船の一つであった。
ふじの周囲からの写真を何枚か撮影し、船内に入る。
こういった閉鎖的空間に合理的に組み込まれた生活空間こそ、
人間の限界と英知が垣間見えるというもの。
余す事無く撮影しよう… そう思っていた。
食堂、寝室、狭い廊下…、期待通り、
凍てついた大陸を目指した記憶が、
そのまま凍てついて残っているかのようだった。
撮りたい、撮りたい!
そう感じてシャッターを切るオレ。
そして、沈黙するカメラ。


…カメラが、動かない。
あろうことか、ここで壊れるのか君は。
購入して五年、オリンパスのカメラは凍りついた。
今ここで凍りついたのだ。
凍てついた大陸を目指した記憶がそのまま凍てついた場所で
凍てついたのは他でもないオレのカメラだ。
寿命を迎えてしまったのか?
それともどうしても写したくない何かがここにはあるのか?
でも、今までありがとう。
君と一緒に見た数々の思い出をオレは忘れない。



そして、君の最後に写してくれた写真をここに飾ろう。